三島由紀夫のいる風景◆年 譜◆

U)肉体の河◆1961年−1965年
◆1961年(昭和36年)36歳
【1月】 短編「憂国」(「小説中央公論」2巻1号)。季刊誌「声」10号で廃刊。小説集『スタア』(新潮社)
【2月】 「お嬢さん」…大映で映画化(弓削太郎監督)。近代能楽集「綾の鼓・葵上・卒塔婆小町」…ニューヨーク・シティのプレイヤーズ劇場で翌月にかけ50日間公演(ハーバート・メイチズ演出)。ニューヨークで「近代能楽集」試演を見る。
【3月】 長編「宴のあと」がモデル問題を惹起し、15日、元外相有田八郎よりプライバシー侵害のかどで提訴される。
【4月】 紀行「美に逆らふもの〜香港のタイガー・バーム・ガーデン」(「新潮」58巻4号)。評論「存在しないものの美学〜『新古今集』珍解」(「国文学・解釈と鑑賞」)。『神西清全集』全3巻(文治堂)の編集参加。剣道初段になる。
【5月】 日本ペンクラブ代表に、長編「宴のあと」問題につき説明。
【6月】 長編「獣の戯れ」(「週刊新潮」12日〜9月4日)。東京地裁で「宴のあと」プライバシー裁判初公判が開かれる。
【7月】 評論「魔〜現代的状況の象徴的構図」(「新潮」58巻7号)。「橋づくし」…歌舞伎座で新派により公演(榎本滋民脚色・演出)
【8月】 日記「21日のアリバイ〜八月の日記から」(「夕刊読売」21日)
【9月】 短編「苺」(「オール読物」16巻9号)。長編『獣の戯れ』(新潮社)15日、アメリカの「ホリデイ」誌に招かれて渡米し、半月ほどサンフランシスコに滞在。カリフォルニア大学共催の日本シンポジウムに出席、「日本の青年」と題し講演。29日までアメリカに滞在。
【10月】 評論「“Party of One”英文ドナルド・キーン訳」(「ホリデイ」日本特集号)。「灯台」…青年座稽古場で青年座第3回勉強会により公演(五十嵐康治演出)
【11月】 評論集『美の襲撃』(講談社)。「十日の菊」…第一生命ホールで文学座創立25周年記念により公演(松浦竹夫演出)
【12月】 戯曲「十日の菊 3幕29場」(「文学界」15巻12号)。戯曲「黒蜥蜴 3幕13場 江戸川乱歩原作による」(「婦人画報」)。パリの週刊誌「エクスプレス」が長編「金閣寺」を紹介。
 ・英訳『潮騒』(日・タトル)(米・バークレイ)
 ・独訳『金閣寺』(ミユンヘン、パウル・リスト)
 ・伊訳『潮騒』(ミラノ、フェルトウリネリ)
 ・フィンランド訳『金閣寺』(オタワ)
 ・スロバキア訳『潮騒』(ブレゼルノバ・ヅルズバ)
S36 S36  
 2.1 嶋中事件(右翼少年の中央公論社社長襲撃)
 4.12 ソ連、人間衛星打ち上げに成功(ガガーリン少佐)
 4.19 米駐日大使にライシャワー着任
◆1962年(昭和37年)37歳
【1月】 短編「帽子の花」(「群像」17巻1号)。短編「魔法瓶」(「文芸春秋」40巻1号)。長編「美しい星」(「新潮」59巻1〜11号)。長編「愛の疾走」(「婦人倶楽部」43巻1〜12号)。評論「終末観と文学」(「毎日新聞」14日)。「十日の菊」で第13回読売文学賞(戯曲部門)を受賞。
【3月】 戯曲「源氏供養〜近代能楽集の内 1幕」(「文芸」復刊3号)。評論「近代能楽集について」(「国文学・解釈と鑑賞」27巻3号)。『三島由紀夫戯曲全集』(新潮社)。江戸川乱歩原作「黒蜥蜴」…サンケイホールで水谷八重子・芥川比呂志らにより公演(松浦竹夫演出)。「黒蜥蜴」…大映で映画化(井上梅次監督)
【5月】 評論『不道徳教育講座』(中央公論社 新書版)。「綾の鼓」…新橋演舞場で新派により公演(松浦竹夫演出)2日、長男・威一郎誕生。このころ、ライフワーク「豊饒の海」の構想成る。
【6月】 晴海の自動車教習所へ運転練習に通う。
【8月】 短編「月」(「世界」200号・創刊200号記念号)
【9月】 長編「午後の曳航」取材のため横浜で乗船。
【10月】 評論「現代史としての小説 上下」(「毎日新聞夕刊」9〜10日)。評論「谷崎潤一郎論 上中下」(「朝日新聞」17〜19日)。長編『美しい星』(新潮社)
【11月】 「鹿鳴館」…新橋演舞場で新派により公演(戌井市郎演出)。ゲーテ原作「プロゼルピーナ」…伊勢丹ホールでサンケイ邦舞研究会により公演(堂本正樹演出)、能形式で三島訳。
【12月】 評論「第一の性」(「女性明星」〜39年12月)。編著『文芸読本 川端康成』(河出書房新社)。評論「川端康成序説」、座談会「川端康成氏に聞く」収録。
 ・伊訳『金閣寺』(ミラノ、ガルザンティ)
 ・スウェーデン訳『金閣寺』(ストックホルム,ボニエ)
 ・韓国訳『潮騒』(ソウル、新太陽社)
S37    
 8.12 堀江謙一、ヨットで太平洋横断
 10.10 ファイティング原田、世界フライ級チャンピオンに
 10.22 キューバ危機
◆1963年(昭和38年)38歳
【1月】 短編「葡萄パン」(「世界」205号)。短編「真珠」(「文芸」2巻1号)。長編「肉体の学校」(「マドモアゼル」〜12月)。評論「私の遍歴時代」(「東京新聞夕刊」10日〜5月23日)。長編『愛の疾走』(講談社)14日、芥川比呂志、仲谷昇、岸田今日子ら29名が文学座を去り、新たに劇団雲を結成。三島は文学座再建のために残り、理事となる。
【2月】 評論「林房雄論」(「新潮」60巻2号)
【3月】 限定版・細江英公写真集『薔薇刑』(集英社)の被写体モデルとなる。評論「細江英公序説」収録。長編『愛の疾走』(講談社)。剣道2段に昇進。
【4月】 随筆「筋肉と知性の練磨〜特集・わたしの中の“男らしさ”の告白」(「婦人公論」48巻5号)。「三原色」…草月会館で堂本正樹リサイタルにより公演(堂本正樹演出)
【6月】 劇評「可憐なるトスカ」、対談「文学座の新しい道・その一 安堂信也」(「文学座プログラム」)。ヴィクトリアン・サルドウ作、安堂信也訳・三島修辞「トスカ」…新宿厚生年金会館小ホールで文学座により公演(戌井市郎演出)
【7月】 日生劇場のためのオペラ「美濃子」脱稿。
【8月】 短編「雨のなかの噴水」(「新潮」60巻8号)。短編「切符」(「中央公論」78年8号)。評論「芸術断想」(「芸術生活」〜39年5月)。評論『林房雄論』(新潮社)。30日より翌月6日まで、長編「絹と明察」取材のため彦根、近江八景へ取材旅行。
【9月】 評論「天下泰平の思想」(「論争」27号)。書き下ろし長編『午後の曳航』(講談社)。「灯台」…新橋演舞場で新派により公演(戌井市郎演出)。舞踊劇「葵上」…イイノホールで花柳龍二リサイタルにより公演(堂本正樹脚色・演出)
【10月】 短編「剣」(「新潮」60巻10号)。戯曲「鹿鳴館」…明治座で新派により公演(戌井市郎演出)。細江英公写真集『薔薇刑』が西独フランクフルトのインターナショナル・ブックショーに出品され、大きな反響を呼ぶ。
【11月】 評論「わが創作方法〜創作方法の問題2」(「文学」31巻11号)。評論「文学座の諸君への公開状〜『喜びの琴』の上演拒否について」(「朝日新聞」27日)。23日、文学座のための戯曲「喜びの琴」が座内の反対で上演中止と決定され、文学座を脱退。矢代静一、松浦竹夫、賀原夏子、中村伸郎ら14名がこれに続く。
【12月】 小説集『剣』(講談社)
 ・英訳『宴のあと』(米・クノップ)(英・セッカー)
 ・スウェ―デン訳『近代能楽集』(ストックホルム、ボニエ)
 ・スペイン訳『金閣寺』(バルセロナ、バラル)
 ・ノルウェー訳『金閣寺』(オスロ、ギルデンダル)
S38    
 3.31 吉展ちゃん誘拐事件/5.23 狭山事件/11.22 ケネディ大統領暗殺
 12.15 力道山刺され、死亡
◆1964年(昭和39年)39歳
【1月】 長編「絹と明察」(「群像」19巻1〜10号)。長編「音楽」(「婦人公論」49巻1〜12号)。劇団NLTを結成しその顧問となる。
【2月】 戯曲「喜びの琴 3幕6場」(「文芸」)。長編『肉体の学校』(集英社)。戯曲集『喜びの琴 付・美濃子』(新潮社)。『三島由紀夫短編全集』(新潮社)
【3月】 「剣」…大映で映画化(三隅研次監督)
【4月】 評論集『私の遍歴時代』(講談社)。「潮騒」…日活で映画化(森永健次郎監督)
【5月】 長編『獣の戯れ』(新潮社 2版・白カバー)。「喜びの琴」…日生劇場で劇団四季により公演(浅利慶太演出)。長編「獣の戯れ」…大映で映画化(富本壮吉監督)。このころ、「春の雪」のライト・モチーフ浮かぶ。
【6月】 20日より10日間、出版打ち合わせのため渡米。
【7月】 限定版『三島由紀夫自選集』(集英社)
【8月】 「婦人公論」東京オリンピック記念論文の選考委員になる。「箱根細工」大阪新歌舞伎座で藤山寛美らにより公演(館直志脚本・演出)。2日より2週間、伊豆下田の東急ホテルで家族と共に過ごす。以後、例年8月は下田で過ごすことが慣例となる。
【9月】 長編『幸福号出帆』(桃源社)。翌月にかけ、東京オリンピックの取材記事を報知、読売、朝日、毎日の各紙に発表。河出書房新社第3回文芸賞の選考委員になる。係争中の長編「宴のあと」裁判は、東京地裁第一審で敗訴、被告側は翌月直ちに提訴上告。
【10月】 戯曲「恋の帆影 3幕」(「文学界」18巻10号)。長編『絹と明察』(講談社)。「恋の帆影」…日生劇場で水谷八重子らにより開場1周年記記念公演(浅利慶太演出)
【11月】 長編「絹と明察」により第6回毎日芸術賞(文学部門)を受賞。 長編「宴のあと」が国際文学賞候補に上る。河出書房新社『石原慎太郎文庫』全8巻の編集委員になる。
【12月】 評論『第一の性〜男性研究講座』(集英社・コンパクトブックス)
 ・独訳『仮面の告白』(ハンブルグ、ローボルト)
 ・伊訳『宴のあと』(ミラノ、フェルトウリネリ)
 ・デンマ―ク訳『近代能楽集』『宴のあと』(コペンハーゲン、ギルデンダル)
 ・韓国訳『美徳のよろめき』(ソウル、晴雲閣)
S39 S39 S39.9
 4.28 「平凡パンチ」創刊/8.10 ベトナム反戦集会
 9.23 王貞治55号、ホームラン日本新記録
 10.1 東海道新幹線開業/10.10 東京オリンピック
◆1965年(昭和40年)40歳
【1月】 短編「三熊野詣」(「潮騒」62巻1号)、短編「月澹荘綺譚」(「文芸春秋」43巻1号)。 評論「現代文学の三方向」(「展望」73号)。シナリオ「憂国」脱稿。
【2月】 短編「孔雀」(「文学界」19巻2号)。評論「法学士と小説」(「学士会会報」686号)。長編『音楽』(中央公論社)。9日より5月末まで、自宅3階増築のためホテル・ニュージャパンに滞在。 奈良の円照寺に「春の雪」取材のため訪れる。
【3月】 紀行「ロンドン通信」(「毎日新聞夕刊」25日)。英国文化振興会の招きでロンドン旅行、約1カ月滞在。
【4月】 翻訳・神秘劇「ガブリエレ・ダンヌンツィオ作『聖セバスチァンの殉教』」(「批評」復刊1〜3号)、池田弘太郎と共訳。紀行「続ロンドン通信 上下」(「毎日新聞」9〜10日)。村松剛、佐伯彰一らの「批評」が復刊され、山崎正和らと新しく同人に迎えられる。自作自演の短編映画「憂国」完成。共演鶴岡淑子。
【5月】 近代能楽集「弱法師・班女」…アートシアター新宿文化でNLT新宿文化提携により公演(水田晴康演出)。「灯台・綾の鼓」…日仏会館ホールで劇団造形公演(天野二郎演出)。浅野晃詩集「天と海(英霊に捧げる七十二章)」を朗読し、タクト音響レコードに吹き込む、題して「ポエムジカ」(詩楽)。
【6月】 短編「朝の純愛」(「日本」)。限定版・サフィール(15)『レスボスの果実』(プレス・ビブリオマーヌ)。近代能楽集「熊野」…歌舞伎座で中村歌右衛門により公演
【7月】 小説集『三熊野詣』(新潮社)
【8月】 評論「私の戦争と戦後体験〜二十年目の八月十五日」(「潮」)。評論『目〜ある芸術断想』(集英社)
【9月】 長編「春の雪〜『豊饒の海』第1巻」(「新潮」〜42年1月 62巻9〜64巻1号)。5日より11月にかけ、夫人同伴でアメリカ、ヨーロッパ、東南アジア各地を旅行。長編「暁の寺」取材のためカンボジアのアンコール・ワットと並ぶ遺跡アンコール・トムに立ち寄る。このころ、谷崎潤一郎、ショーロフと並びノーベル文学賞候補に上る。
【11月】 戯曲「サド侯爵夫人 3幕」(「文芸」4巻12号)。評論「太陽と鉄」(「批評」〜43年6月 3〜12号)。戯曲『サド侯爵夫人』(河出書房新社)。「サド侯爵夫人」…新宿紀伊国屋ホールで劇団NLT・紀伊国屋ホール第2回提携により公演(松浦竹夫演出)。18日、「豊饒の海」取材のため、奈良の円照寺へ行く。このころ、碑文谷警察署で初めて居合抜きを習う。
【12月】 「肉体の学校」…東宝で映画化(木下亮監督)。戯曲「サド侯爵夫人」が文部省芸術祭賞(演劇)に決まる。
 ・英訳『午後の曳航』(米・クノップ)
 ・英訳『仮面の告白』(英・ワールド・ディストリビューターズ)
 ・仏訳『宴のあと』(ガリマール)
 ・スイス(独)訳『志賀寺上人の恋』(チューリッヒ、ディオゲネス)
 ・スウェーデン訳『潮騒』(ストックホルム、ボニエ)
 ・デンマーク訳『金閣寺』(コペンハーゲン、ギルデンダル)
S40    
 2.7 ベトナム戦争で北爆開始/6.22 日韓基本条約調印
 10.21 朝永振一郎、ノーベル物理学賞受賞/11.10 中国で文化大革命始まる
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